21.監査に関する質疑応答
会計監査の実態動画セミナーC- それでは、これから質疑応答の時間を取りたいと思います。ここから、当時のパートナーの石島が参加させていただきますけれども、何でもいいので、何かご質問のある方がいらっしゃいましたら。普段監査法人に聞けないようなことでも対応いたしますので、何かありますか? では、なしということでよろしいですか?
D- では、例えば、私から質問申し上げてもよろしいですか?
C- はい。
D- 皆さん、関心のありそうなところで、監査報酬はどのように決まるのですか?
B- 監査報酬というのは単価と時間で間違いなく決まっていまして、標準単価は監査法人の中にあります。標準単価は例えばパートナーなり主査をやっているマネージャー層なり、あとは補助者をやっているシニアなりスタッフなりというところで、大体給料決まっているわけです。給料は決まっていますけれども、当然組織なので、グローバルネットワークにお金も払わなければいけませんし、賃料もありますし、間接部員も大手の監査法人は結構多くて、自分の給料以上の単価が設定されているわけです。ですから、入ったばかりの会計士試験の合格者の方、多分、今、月給は25万円ぐらいです。私たちのころは30万円ぐらいだったのですけれども、25万円ぐらいです。ですから、ボーナスは今30万円ぐらい。年収が400万円ぐらいだと思います。400万円少し切っているぐらいだと思います。それで、ではその人が間接費も含めて稼いでいかなければいけないのですが、大体この層が半分。1000万円以上もらっているようなパートナー、あるいはパートナー以前の人たちが今半分弱。こういう状況で、昔からあまり変わらないですけれども。多分皆さんもある程度ご存じなのではないかと思うのですが、のべ単で1人日に10万円というのが大体最低ラインなのです。のべ単です。だからパートナーもその若い衆も含めて1人日10万円取っていると、大体もうからないけれども、最低コストは稼げますというのが、大体相場です。ずっと見ていてもそのようなものだと思います。皆さんもぜひきょう、持ち帰っていただいて。時間レベルのあるいは日かもしれない。監査計画、あるいは見積もりの中に日が出ていると思うのです。200人日とか、350人日とか。掛ける10と比較して、大幅に高いか大幅に低いかというところで、大体割安か、割高かということはある程度判定できるのではないかなと思います。15年ぐらい前からあまり変わっていないです。最近はそれを大幅に下回る提示をするケースが、大手の監査法人で多いです。ただし、コスト構造が大幅に変わっているわけではないので、きついと思います。だから、ずっと続かない数字なのではないかなと思います。コスト構造を大幅に変えた監査法人でなければ、その数字は出せないはずです。間接人員が大幅に減ったということもないし、オフィスも変わっていないし、ただすごく給料を取っていた何人かが抜けてしまっているだけの話なので、なかなかそこは難しいのではないかなと思います。
あと何でも言います。事前にご質問いただいた方もあとで時間があれば、またご回答しますけれども。別にどなたが何を言ったとか、当然言いませんから、そういう質問言っていただいても結構ですし。何かございませんか? 皆さんシャイなのですね。あまり質問していただけないと、当ててしまいますよ。拒否されると、寂しいですけど。どなたかないですか? これは言っていただかないと、盛り上がらないのです。
決算早期化のために、大きな要素は二つあると思うのです。一つは決算を早く締めるということと、あとは監査対応を早くすること。大きく分けると二つだと思って、結構前者はいい感じになっているのではないかなと思うのです。決算早期化しなければいけない。法的予定がありますから。四半期レビューもできていましたし、45日ルールもあるし。決算早くなってきたと思うのですよね。試算表を早く締めるという意味では。監査対応のほうが、今度は結構重荷になってしまっていて、トータルして決算早期化はなかなか思うように進まないと。監査対応に関しては先ほど申し上げた通りです。監査調書をもう作ってしまうのです。どうせやっているのですから。質問に答えているではないですか。質問に答えて資料を出しているではないですか。どうせやっているのです。だから、それを事前にやって、お互いのやり取りを最小限にしてしまうのです。それによって、監査対応の時間は大幅に減ると思います。大切なのは、どうせやっていることを先にやるだけのことだということです。今やっていないことをやろうと思ったら、皆さんの工数が増えてしまいますから、あまり意味がないです。人が足りないと、1人入れることになったら、いろいろな意味でコストアップになってしまいますから。そうではなくて、どうせやっているものを事前にやっておくということがすごく大きなポイントになってくるかなと思います。
先生ないですか?
E- 石島でございます。よろしくお願いいたします。
決算早期化というのも、確かに特に期末においては、いろいろな会計処理が多いし、開示資料も多いということで、そこも大事だと思うのですが、私が監査役をやっている会社では、最近だんだん月次決算の検討会を充実させてきています。月次決算の段階で経費の増減理由や、BSの増減理由や、滞留在庫がどなっているかなど、そういうことを毎月検討する、その積み重ねが最終的に年度だったり、四半期だったりの決算書の分析にもつながると。それから、早く手を打てるとか、経理部門から営業なり製造なりに何か要請する必要があるかないか、そういう傾向を考えると、そういった月次決算検討会というのも昔から行われてきたことだとは思うのですが、そういうことを充実させていくのも一つのやり方かなと思います。以上です。
C- ほかに何かございますか?
F- すみません、一点。先ほど1日10万円と言っていました。それを超えるような監査報酬を出しているような場合には、どういうものを求めていったらいいのですか?
B- その質問は結構何度か受けているのですが。一つは相見積もりをきちんと取ることです。めちゃくちゃ有効です。信じられないぐらい安くなるケースはあります。これは普通だと思うのです。出入り業者と監査法人の関係はちょっと良くないとは思いますけれど、要は外部委託業者なので、その継続をして競合もあるわけです。独占なわけではないのです。そこで相見積もりを毎年きっちり取ってやっていくというのは、お互いの緊張関係をきちんと持つ上ではすごく大事だと思うのです。ただ、やはり僕の感覚ですけれども、大手であれば10万円ぐらいで抑えておかないと続かないと思います。ただ、今やるので。短期的に考えるのであれば、もう少し首を絞めるという手はあるかなと思いますが、本人たちは本当に自分で首を絞めていますから。多分長続きはしないと思うのです。(####@01:52:24)出てきてしまう可能性があるので。そこをベースに考えられたらいいかなと思います。
大手であれば同レベルの、中堅であれば同レベルの監査法人からやるとかなり効果は高いのではないかなと思います。
F- 例えば相見積もりで安いほうに乗り換えたときに、総会での理由はどういう理由があるのですか? ただ、安いからですか?
B- 監査契約は1年契約なので、ほとんど任期満了です。監査法人の交代理由で、まともに答えているところは、ほとんど見たことないです。よほどもめたとき以外は、任期満了です。それで、あまりないです。総会で質問はあるかもしれないです。そのときは、金額のことを言ってもいいのではないですか? ほとんど任期満了です。見ていただければ分かると思います。理由は全然書いていないです。だから早めにやったほうがいいかもしれないですね。あれ、書かなければいけないと、僕は思うのですが、書かない実務になっています。確かに契約は1年契約になっていますから、任期満了は嘘ではないですけれど。通常は継続なわけなので、なぜ今年に限って任期満了で完了してしまったのというところは。本当は書いたほうがいいのではないのかなと思いますけれども、ほとんど書いていないです。
F- 分かりました。
B- 決算早期化についていうと、だいぶ日本国内はやるところまでやってしまったという企業さんが多くて、どこが遅いのだというと連結です。連結は子会社なのです。子会社の決算が締まらない。締まっているのだけれど、少し質問すると訳分からない。これなのです。子会社は基本、よほど大きい会社でなければ、日本人の方が何名かいらっしゃいます。ただ、なかなか全世界の子会社に財務経理の日本人の担当者がいるかというと、いないです。トップは営業なり開発なりという方が日本から行ってやっています。日本人です。日本の経験もあります。でも経理は知りませんから。では現地のローカルスタッフの会計の方とコミュニケーション取れるのは誰かというと、彼です。もちろん日本国内で英語、あるいは現地語ができるスタッフを抱えているケースがありますけれども、この人たち日本の連結決算全体をやっていませんから、やはり全体が分からないです。現地のレベルを上げていくしかないということで、日本国内の早期化なりを一段落付いた会社さんというのは、海外に行っています。経理課長バリバリのクラスを海外に当てるか、決算の合間をぬって、2週間、3週間出張ですと何カ所か回って、現地の決算のレベルを上げるということを今やり始めています。そこをやらないと、完全にここがネックになってしまっていますから、本社の決算がいくら良くても、子会社からそれが上がってこないということで、いっぱいいっぱいになってしまっている。そこを補修しているというか、手を付けられているところが中堅、中堅といっても売り上げが千億の単位、兆の単位に行かないような会社さんでは、そういうところを今動かしているケースが多いです。
今そこが大きな問題になっていないのは、3カ月ルールがあるじゃないですか。3カ月ずれています。日本の会社さんの子会社、一番多いのはどこかといったら、中国が多いです。中国は国定で12月決算です。だから、そこから3カ月ずれたまま使っているわけです。3カ月猶予があれば間に合うのです。決算締まってから45日以内で発表して、プラス3カ月あるわけですから、135日あるわけです。それだけあれば間に合うわけですよ。だけど、これが、IFRSが導入されてしまって、決算日3カ月ずれNGとなった段階では絶対無理なのです。どうひっくり返っても。3カ月猶予があって、なんとか締めている状況ですから。135日が45日になってしまうのです。その可能性も踏まえて、今のうちから準備を始めている企業さんは結構あります。そうすると、大体の連結担当やったような方なので、企業の中では中核の方じゃないですか。少し時間をかけて、その後釜と作っておいて、決算を3回、4回やって、その課長をできれば外に出していく。将来的には、彼なり、彼女なりが海外経理とか財務部長になっていくのだと思うのです。そういうような形で今、なっている会社が多いです。
あとはよろしいでしょうか? はいどうぞ。
G- うちの会社は物流の会社で、中国とアメリカに子会社があって、連結もやっているわけです。先ほど2月に税効果のパート2があるということなのですけれども、例えば税効果のここ2、3年よく知っている方にお願いして、確認をしてもらって、監査法人に見てもらったりしているのですけれども、その方との契約も切れそうなので、われわれ自身が見ていかないといけないのですけれども、その税効果がすごく難しくて、どういうふうに進めていこうかと。中で勉強会もやっているのですけれども、連結でということもあって、それをどういうふうに進めていったらいいかなというふうに思っているのですけれども。監査法人と事前にこういう形で、こういうフォーマットでやったらいいのではないかというのは、ある程度作ってもらう、どういうふうに進めていったらいいのかなというところなのですけれども、何かアドバイスありましたら。
-- そのフォーマットというのが表のフォーマットではなくて、やり方といいますか。
G- 表も含めまして、総合的な。
-- そういう意味では、監査法人もそれぞれノウハウがあって、税効果のチェックをする独自のフォーマット、調整の方法や、正確性の確認の方法など、そういうものを監査法人も持っているわけです。ですから、そういう方にアドバイスいただいてというような、やはりこういう形になるのではないですかね。そういう方からそういう税効果のチェックのフォーマットも必要でしょうし、いろいろな会計基準や実務指針に従ったチェックポイント、その両面が必要だと思うのですが、その中で多分、特に実現可能性というか、(####@01:59:40)そういうことになってくるのです。どうしてかというと、期末になって初めてというよりも、その前からかなり検討できる事項が多いと思いますので、そういったポイントを取り上げて事前に協議をしておくと。間違いないようにするには、確かにそういうフォーマットとか、税金調整、ケアレスミスをきちんと見つけるとか、そういう方向をもう一方では固めていくということではないかと思います。
やはり一番問題になるのは、税金の回収可能性のところかなと思います。特に最近いろいろ細かいことを言うようになってきている面もありますので、そういう意味で事前に議論すべき点を明確にした上で、決算の何カ月か前から監査人と打ち合わせるということになると思いますけれども。
-- 今まで3年間やってきたことと、さらにだんだん厳しくなってきているという傾向はあるのでしょうか?
-- そうですね。確かに私も実務で接していても、やはり前はそんなに細かいことを言わなかったことが、いろいろと言われるようにはなってきています。大手は。昔からチェックポイントにはなっていたのだけれども、それほど意識していなかったものが、特にいつ実現するか分からない一時債務やそういうものに対しての見方も厳しくなってきているわけですから、そういう意味ではそういう動向も踏まえる必要があると思います。毎年やっているはずなのに、毎年いろいろとチェックポイントを監査法人から言われると言う部分も確かに出ております。
B- 税効果ですね、完全に監査法人の監査がおかしいですよ。チェックリスト形式にすると、一番間違いが起きているのが税効果のところなのです。彼らはどういうチェックリストを作っているかというと、これは税効果会計の実務指針に区分があります。皆さんも1の区分の会社だとか、2の区分の会社だとか、そういう感覚をお持ちだと思うのです。1だったら満額いいとか決まっているわけです。チェックリストを作ろうと思ったらあのようになるのです。まず皆さんの監査をやっている会社がどの区分に当てはまりますか。それを作るために過去の数字、PS数字あとは課税所得入れて、どの会社に当てはまるのかというものを作って、どの会社に当てはまるか、結論はこうだというふうにするのです。それが100パーセント間違いなのです。税金資産に関しては、明確にルールが決まっていて、スケジューリングによるのです。全部スケジューリングによるのです。スケジューリングは難しいので、特に税効果会計を日本に入れたときに、スケジューリングの文書の内容がほとんどの会計士は意味が分からなかったのです。何を言っているのか分からなかったのです。それで、これでは誰もできないということで、フォーイグザンプルであれを付けたのです。スケジューリングとはこういうことだと。例えばこういうことだよということで、あのフォーイグザンプルを付けたのですが、いつの間にかあれがルールになってしまったのです。そうではなくて、全部スケジューリングなわけです。基本的に将来の課税所得が認められるときにスケジューリングして計上するのが原則なのです。だからそうやって丁寧にやっていくと、1年とか3年とかで決まるわけではなくて、例えばですが、3年後に工場の閉鎖が決まっていて、その減損が実現することがはっきりしたとするじゃないですか。その3年後の課税所得、最低これだけは見込まれる。少なくともその部分は使えるねということになったら、それを絶対に上げられるはずなのです。だけど、いやいや基準に当てはめてみると1年だからダメとか、そこがもめるところで結論が変わってくるところなのです。原理原則にいったん戻ることっていうのはすごく大事なのですよ。基準をもう1回読み直してもらうと、そう書いてあるのです。 よく見れば。本当に最後のほうにチラッと書いてあるだけなので。ただ、あれを見てチェックリストを作るとそうなってしまうのです。今は現場で監査をやっている、心が非常にある会計士以外は、多分読んでいないのです。ああいうふうになっていることに気付かないのです。僕が税効果の問題でご相談を受けて、結論は変わったというのはそれです。スケジューリングをちゃんとして見たら、あの後のパターンに必ずしもはまらないパターンがあって、だから認められたのです。別に魔法を使っているわけでもなんでもなくて、ただ単に原理原則に戻ってちゃんとした。それでもう一つ大事なのは、業績予測は監査人の責任じゃないですから、将来の課税所得を見積もるというのは、まず業績見込みがあるわけじゃないですか。業績見込みがあって、加減算の報告がありますけど、加減算の報告なんて正直言うと、ほとんど見積もれないですから。翌年に見込まれるものを除いて。事業税ぐらいじゃないですかね。そうなってくるとほとんど業績見込みなのです。それは会社の責任なので、税金資産を求めるときの事業計画のようなものを取締役会で承認してしまうのです。そうすると、彼らの責任がリリースされます。監査人の責任。あなたたちの責任ですよね。仮に、すごくアグレッシブな事業計画に基づいた課税所得を見積もっているとすれば、それは取締役会の責任になるわけですから、そこでリリースをして、スケジューリングをしてやると彼らは認めやすくなるわけです。責任の区分をはっきりするということが大事です。こんな事業計画を無理でしょうと、金融庁と会計士でやっていても仕方がないのです。それは、もう完全に社長、取締役会の問題なので、取締役会でその責任を負えるか負えないかというところが(ポイントです。一つは原理原則に戻って、スケジューリングをきちんとする。責任の範囲をきちんと、会社と監査人とを明確にするということが重要です。