11.リスクアプローチについて

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 これは、イメージで見ていただけるといいかなと思います。リスクアプローチのことを、結構真面目にやろうと思うと、本1冊ぐらいになるのです。これがさっき言った監査リスク、一番小さくしなければいけないリスクなのです。これの構成要素として、固有のリスクと構成リスクと発見のリスクがあります。ここに書いてあります。固有のリスクというのは企業が置かれている環境やその勘定科目自体の特性から生じるリスク。例えば、複雑な計算や見積もりの不確実性が高い体系上の見積もりによる金額で構成された勘定、たとえば退職金などです。そういったものなのです。それこそ事業構造改革契約金を今回上げようというような話になると、それは、そもそもその科目自体にリスクが高いのです。あとは、売掛金などです。これは誰がやるという話ではないですけれども、架空の売掛金がポンとなって、売り上げが上げやすい科目です。それが、この固有のリスクになるのです。なので、この固有のリスクが高いものに関して言うと発見ミスをしないように監査手続きをたくさんやって、この固有のリスクを極限まで小さくしないといけないです。絶対にそのようなことが起きないようにしないといけないわけなのです。そうすると、例えば、引当金などの監査をする人は、入って1年目や2年目の人はしないですよね。貸し倒し引当金は毎年同じ計算をしているだけであれば、もしかするとしているかもしれないですが、多分しないと思うのです。売り上げの監査も、入って1年目や2年目の人は多分しないと思うのです。このリスクアプローチの結果から、分けているのです。彼らのリソースも分けている。売り上げのカットオフエラー、期ずれというものは、普通は期末にやりますから、月次でずらしても仕方がないのです。同じ3カ月の中でずらしても結局影響ないですから。期末に近づいたときにチェックするのです。あるいは決済が締まったあとに、決算日前後の売り上げ取引だけ見ることがあります。あれはそもそもこの固有リスクが高いのでやっている手続きなのです。この固有のリスクを減らす。一方で、現金は、この固有のリスクがめちゃくちゃ低いのです。だって、現金あるぜ。1兆円とか。簡単です。ないことはすぐに分かってしまうじゃないですか。売掛金も1兆円したら分かりやすいと思うのですけれども。かなり一定規模の会社で、10万円とか9万8650円とか、そういった細かい金額を裏から協力企業への売掛金として50本や60本ぶち込んだら、そう簡単にいかないです。試査でいきますますから、一定以上の金額は結構細かく審査しますけれども、一定以下の金額にばらしてしまえば分からないです。今までと比較して、その他の件数がいきなり10倍とか100倍になったら気付くと思いますけれども、気がきかない監査人だったらすぐには気付かないです。やはり固有のリスクというのを減らすためにそういう手続きを彼らはしてくるのです。

 統制リスクというのは、内部調査で評価をしますので、普通は引当金など、経理部長のはんこ1本で決められるかというと、決められないようにしています。会社にとってもリスクが大きいですから、少なくとも管理担当の役員の方とか最終的には取締役会でいろいろなものを決めないといけません。例えば、賞与引立金は、賞与を決めないと決められませんから、普通は取締役会決済です。決められないとなると、統制リスクが低くなるわけです。会社の内部統制がきちんとできていれば。監査手続きをバンバンやるか、軽くやるかというところの上下によって、最終的には、監査リスクを減らします。目的は監査リスクを減らすことなので、会社の内部統制のレベルが高ければ、ここは減るのです。固有のリスクはどこも変わりませんから、皆さんががんばっても売掛金の固有のリスクは減らせないのです。減らそうと思ったら、社内の内部統制をしっかり作っていかないといけない。社内の内部統制のレベルが高ければ、監査をするここのリスクは減らすことができるのです。なので、皆さんが事前に一生懸命準備すればするほど、監査人の手続きは減らすことができるのです。皆さんのことを監査人が信用していなければ信用していないほど、手続きが増えるのです。こういう関係にあると思ってください。それは個人的にあの人が好きとか嫌いとか、そういうことではなくて、きちんとドキュメンテーションされていないとダメです。財務部長は信用できるからとか、そういう話ではないです。これが結構大事です。

 彼らはこれを科目ごとに結構細かく点検しているはずなのです。それは皆さんには見せません。皆さんに見せたら、どこを細かくやるのかばれるからです。そうすると、そこだけやるじゃないですか。だから、これを見せられないです。でも彼らはこういうことをやって配分をしているということなのです。

 その例です。先ほどお話ししたような例は、ここに書いてあります。資料をご希望の方は、ぜひ希望していただいて、またこういったところも検討していただくといいかなと思います。要するに、皆さんは皆さんの会社のこういうリスクをあまり考えてないと思うのです。きちんと内部統制を作らなければいけないということは考えていらっしゃると思うのですが、内部統制のレベルを上げるというのは、こういうリスクが高いからです。こういうリスクというのは、一般的に売掛金や引当金が高いという話もありますけれど、企業によって違います。ビジネスモデルによって違うはずですし、社長の怖さによっても違うはずですし、営業部長の怖さや細かさということで違います。だから、皆さんはうちの固有リスクは一体何か、そこをどうやって内部統制で押さえていくかということを常に意識されていかないといけないと思います。

 J-SOXの監査であったのですが、監査の工数を減らそうと思ったら、アサーションだけ取りあえず埋めていけばいいとか、今まで毎年決まっていることをただ単に繰り返していればいいというわけではないです。こういうことを一応彼らは考えている。そこまでイメージしておいていただけるといいと思います。