【ビデオ】社会福祉法人制度改革の背景

動画セミナー社会福祉法人監査

こんにちは。
今日は社会福祉法人の制度改革について簡単にご説明していきたいと思います。
社会福祉法人制度改革の背景についてということですが、社会福祉法人は数がそもそも増えてきていて、結果として一部の社会福祉法人で不適切な運営が指摘されていると、要するに悪いやつが少しずつ増えてきているというのが現状です。
がゆえに、そもそも社会福祉法人というのは書いて名の通り極めて福祉性・公共性が高いものですから、改めてその趣旨に立ち返ってきっちりとした運営をしていこう、というように制度改革がされることになりました。

その概要ですが、大きく分けると公共性・非営利性の徹底、国民に対する説明責任、ということと、地域社会への貢献に分かれています。
各々順番に説明していきたいと思いますが、まずは公共性・非営利性の徹底というところですけども、組織の運営の在り方を見直そうと、簡単に言うとガバナンスの強化ということですが、理事会と評議員会と監事というところをきっちりと決めて、ある意味三権分立するような形で経営をしていこうということです。
監事というのは株式会社でいうと監査役ですね。
理事会・理事というのが株式会社で言うところの取締役会・取締役、そして評議員会というのは少し微妙なんですけども、株主総会に近いような形になっています。
これは社会福祉法人だけではなく、医療法人や財団法人、社団法人も似たようなガバナンスの形態を取っていますけども、一部の理事だけに権限を集中させることなく、それをきちっとチェックする監事であったり、基本的な意思決定については評議員に権限を持ってもらうと、このような形で、一部の力を持った理事だけが独走して経営をすることがないように、まあ普通の会社、普通の組織の管理規定・管理のやり方を導入しましょうというようなものがまず第一です。
これによって、公益性であったり非営利性をきちっと追求していきましょうということです。
ある意味稼ぎたい人は構わないのですが社会福祉法人じゃなくてもいいじゃないですかと、株式会社でやってくださいね、社会福祉法人であれば、公共性、非営利性を担保してくださいね、ということになります。
意外とこういう体制を整えるというのは大変なので、ある意味きちんとした方をある程度の人数集めていかなければならないと、いうことになってきますので、ちょっとした山っ気で社会福祉法人作ろうかなという方々にとってはちょっとずつハードルが上がっていくかもしれません。
しかし、真面目に運営をしていこうと思っている方々にとっては、当然これくらいの体制はとっていかなければいけない、あるいはこういうガバナンスを担っていただける仲間の方がたくさんいらっしゃると思いますので、そういう方々にとっては朗報と言えるかと思います。

そのガバナンスを強化するというところの一つの目玉が会計監査人の設置義務化です。
会計監査人というのは、監査をする公認会計士あるいは監査法人のことで、それを設置しましょうということです。
ただし、全ての社会福祉法人にこれを導入するのはなかなか厳しいので、当面一定規模以上の社会福祉法人に対して、監査法人あるいは公認会計士による監査を義務付けようということになっています。

まず当初としましては、収益が当初10億円以上、これは会社で言うと売上に近いものですが、収益が10億円以上の社会福祉法人か、負債が20億円以上の社会福祉法人ということになります。
これは結構大きいほうですので、様子を見て段階的にもう少し小さいところにもそれを広げていこうということになっています。
会計監査人が設置されない社会福祉法人に対しては、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人による財務会計に係る体制整備状況の点検等あるいは、監事に、さっき言った株式会社で言ったら監査役に公認会計士又は税理士を登用することによって中をチェックしてもらおうということになっています。

ただし、法律で会計監査をやりなさいと言われている社会福祉法人と、努力目標である規模が小さい社会福祉法人では雲泥の差があります。
やはり会計監査が法定で入ってくると、第三者がかなり厳しく内部統制、要は内部でのチェック機能がきちんとしているかと言うようなことも含めて見られることになりますので、これから会計監査人を設置しなければならないというように強制をされている社会福祉法人の運営者の方、あるいはこれからその規模の社会福祉法人を運営しようとされている方にとってみると、会計監査があるんだということと、いったいどういうことをしなければいけないのか、あるいは監査法人の選び方ですね、いうようなところについては、押さえていただいたほうがいいのかなと思っています。

その収益が10億円以上というのはどこが10億円以上なのかという話ですけども、社会福祉法人の新会計基準ベースで言うと、このサービス活動収益合計といったところですね。
ここが10億円以上の社会福祉法人が該当します。
また、旧基準で言いますと、この雑収入から上の赤で囲っている部分が10億円以上の社会福祉法人が会計監査人を設置しなければいけないという対象になってきます。
もう一つ、貸借対照表の負債の部が20億円以上という要件がありますが、それはこの赤で囲っている部分、ここが20億円以上の社会福祉法人は会計監査人を設置しなければならないと、いうことになっています。

会計監査人を選ばなければいけないというような社会福祉法人において、会計監査人をどのように選んだらいいかと、大きく分けると、個人でやられている会計士の先生と監査法人というのがあります。
個人の先生の会計事務所は、規模が小さい社会福祉法人であればある意味フレキシブルにやっていただけますし、フットワークのいい会計士に当たればある意味コストパフォーマンスも非常によくなりますので、考えてみてもいいかもしれません。
ただし、今回監査の対象となる社会福祉法人というのは、一定規模以上の社会福祉法人ということになりますので、規模が大きくなってくると会計監査というのはなかなか個人ではできないんですね。
これを個人で無理やりやろうとするとどこかで手抜きが生じてくるということもよくあります。
これは例えばなんですが、上場会社は日本で約3,500社ありますが、3,500社のうち個人の監査を受けているのは10社くらいで1%も行かないくらいなんですね。
それだけ上場会社クラスになってくると個人では実際なかなか難しいということになってきます。
監査法人になると、品質管理の体制をきっちりと内部で持っておかないと金融庁あるいは日本公認会計士協会からかなり厳しく指導されますし、場合によってはよく処分もされますので、一定規模以上の監査法人に委託することを検討されたほうがいいかなと思っています。

その監査法人には大手と中小監査法人の大きく分けるとこの二つになります。
大手の監査法人は、当然品質管理のレベルが高いです。
ただし、彼らの間接費もめちゃめちゃ高いです。
ですので、監査報酬が跳ね上がる結果になります。
もちろんですが、ものすごく優秀な会計士はどこにいるんですかと言うと、当然大手の監査法人にいます。
大手の監査法人のトップレベルでやっている公認会計士が業界の中の間違いなくトップレベルの会計士です。
しかし、この人たちはどこの仕事をやっていると思いますか。
当然、監査報酬が高くて、監査をすることが難しいいわゆるグローバル企業の超大手企業の監査をやっています。
上場会社の中でも超大手企業ではない、グローバル企業ではない、監査報酬もあまり払っていない、という会社にそのスーパー会計士は来ません。
ということになると、むしろ品質の面でも、元大手で経験を積んでいるような方々が中心になっている中小監査法人で、一定以上の組織を持っている監査法人を社会福祉法人としては選ぶ、という選択肢も十分視野に入ってくると思います。
主にそこが中心になってくるのかなと思います。
バランスが大事だと言うことです。
大手がいい悪いとか、個人が悪いということではなくて、今ターゲットになっている社会福祉法人の監査をやるという観点で言うと、大手に捉われず、知り合いだからと言って個人に捉われず、中小の監査法人というのもぜひ選択肢として考えていただきたいなと思っています。

このガバナンス強化というところですが、会計監査が入ると何が変わるのか、会計監査が入っても実際粉飾決算の問題なんていうのは起きているわけですよ。
世界に名だたる様な大企業であっても、粉飾決算というのは起きるわけなので、会計監査が入っているからと言って財務的に透明になるかと言うと必ずしもそうではありません。
ただし、超大手の会社が粉飾決算をするなんていうのは例外中の例外なんですね。
年に1件あるかどうかくらいの問題なんです。
なので、もし万一起きると大きなニュースになります。
一方、公認会計士あるいは監査法人が監査に入っていない会社の決算書が、今の経済実態を表している決算になっている会社は、極端に言ったら1社もないと言っても過言ではありません。
なぜかと言うと、業績の悪い会社は当然金融機関からの借入が必要になります。
金融機関からの借入が必要となった場合、赤字続きですとなかなか有利な条件が引き出せないどころか下手すると貸してくれない。
となってくると、やはり決算書をちょっと粉飾して利益があったように見せざるを得ないんですね。
金融機関の方の大半もそれはわかっていて融資をするということが横行していますので、ある意味やむを得ず赤字隠しの粉飾決算をしなければいけない、これかなり多いです。
じゃあ儲かっている中小企業はいったいどうなのか、という話なんですけども、儲かっている中小企業の多くは当然税金をあんまり納めたくありませんから、節税を考えるんです。
合法的な節税のうちメジャーなものというのは、生命保険に入る、あるいはリースの商品を買う、これがメジャーなかつ合法的な節税のやり方ですけども、これをやると利益が減るんですね。
利益が減って、結果として税金が減ると。
ただその利益を減らしてコストをかけた分は将来帰ってくるというようなのが節税のスキームですので、本当はもっと儲かっているはずなのに、税金をあんまり納めたくないが故に、実態よりも利益をもっと小さくしてしまうんですね。
ということも含めると、会計監査を受けていない会社・組織のほとんどは実態を表していないと、言い方を変えると粉飾に近いことをやっているというのが実態です。
そう考えると、外部から専門家が来て、チェックが入るというだけで、相当透明性が上がると思っていただいていいと思います。
ですから、コストがかかるお話だとは思いますが、緊張感をもって経営をしていくという意味で、第三者、ここで言うと会計監査人を入れるというのはかなり重要なポイントになってくるんじゃないかなと思います。

先程も見ていただいたのが理事会・監事・評議員会ということなんですけども、彼らがきちんとした内部牽制をしながら経営をしていく中で、外から会計監査人が会計のチェックをするということになります。
会計監査は、内部統制、要は内部でのチェック機能がちゃんと運用できているということを前提としてやりますので、きちんとしたダブルチェックの体制ができているかということを含めて会計監査人はチェックすることになりますので、ガバナンス全体の緊張感を得るという意味では結構重要なポジションだと思います。
しかもコストがかかることですので、きちんとした、皆さんの法人の役に立つ、というと言いすぎかもしれませんけども、そういう監査法人をきっちりと選んでいかないと、監査法人だったらどこでも大丈夫というスタンスだと、相当なコストあるいは労力というものを無駄にしかねないので、考えようによってはガバナンスを強化する、法人の力を強化するいい機会になると思いますので、やらなきゃいけないとなったら皆さんの法人に合った監査人を選んでいただきたいなと思っています。

国民に対する説明責任という視点で言うと、積極的な情報開示をしなければいけないということでいくつかの情報開示をしなければならないということですが、ここですね、上場会社でも一緒なんですけども、関連当事者との取引内容を公表しなさいと、それを公認会計士または監査法人がチェックしなさいという建付けになっているんですが、関連当事者というのは例えばその社会福祉法人の理事であったり理事長であったり、そういう方達なんです。
不正が行われる時というのは、その法人で儲けた利益を個人的な会社に振り込んでしまったり、個人の懐に入れちゃったりということがやり方としてはメジャーなんです。
それを公表しなければいけなくなってしまうんです。
公表することになると外部からの目が光りますよね。
本当にそんなことやっていていいんですかと。
評議員や監事もあるいは関係者も、場合によっては監督官庁もチェックを入れざるを得ないということがあると思うんです。
こういうような情報開示をする、しかもそれが外部にチェックされるということによってガバナンスあるいは透明性を担保するというのが基本的な考え方です。
ですから普通の会社と一緒の形にしていこうよ、まあ言ってみればシンプルな形です。

次に、内部留保についてはよく言われるのですが、社会福祉法人で経営状態がいい法人というのは内部留保がどんどんどんどん積み上がっているんですよ。
これはよく社民党なんかが言うんですけど、内部留保が積み上がっているから、会社あるいは法人というのは余裕綽々でしょうと。
だから給料増やせとか、そういう発想が出てくる。
ですけど、内部留保というのは別に金が余っているというわけではないんですよ。
確かに過去儲けていたかもしれません。
過去儲けていたから、じゃあより良い事業をやっていこうということで、場合によっては介護施設を増やそうということで設備投資している可能性があるわけです。
過去に10億円儲けました、内部留保は過去に10億円儲けたので10億円あると考えるんですね。
ですがそのうち、10億円はもう新しい介護施設を作るのに使ってしまったということになると、法人にはお金がないんですよね。
そのお金を内部留保があるからといって給料を増やせということを言ったら、法人はお金を借りてこなければいけないんです。
なので、内部留保イコール手元のキャッシュではないということを皆さんよく理解しておかなければいけない部分です。
しかし、内部留保は過去の利益の積み重ねでありますから、本当にその金額が正しいのかということと、今度は本当に内部留保がたくさんあって、手元の資金もあるんだったら、それを適正な社会福祉のために使いなさいと、こういう指導を監督官庁はしたいということになります。
その前提としてその内部留保というのはきちんと集計をされているのかと、あるいはそれを今後再投資するときに、そもそもの社会福祉法人の趣旨であるような目的に使われているかどうかというようなチェックをしていきたいと、これによって国民に対する説明責任を果たそうということを考えています。
こちらのスライドでは、儲かったんだったらきちんと再投資しなさいと、しかしそれはきちんと福祉サービスに関連するところに投資しなさいと、いきなりできるものでなければ将来の投資計画をきっちりと立ててくださいね、というような規制がかけられることになっています。

最後に多様な福祉ニーズへの対応というところなんですけども、社会福祉法人の本旨というのは公益的な取組です。
各地域において意味のあることでなければいけないわけですので、結果として日常生活・社会生活上の支援を必要とする者に対して無料又は低額の料金により福祉サービスを提供することを社会福祉法人の責務として位置付けることが必要ということになります。
もともとこういう趣旨ではあるんですけども、一部のちょっと羽振りのいい社会福祉法人が不適切なお金の使い方とか言うことをしないように今回のような規制がされることになったと思っていただいていいのかなと思います。
儲けること自体を国が禁じているわけではないので、それは全然やっていただいて構わないのですが、それは社会福祉法人という形を使わなくてもいいじゃないですかと、社会福祉法人という形を使うからにはそもそもの目的に合った運営をする、ということを考えていただければいいのかなと思います。
が故に、かなり細かいこともこのスライドでは書いてあるのですが、実際はシンプルなこと、もともと社会福祉法人は福祉のために作る、それを効率的にやるために作った法人じゃないかと、そこに戻りましょうというところです。

会計監査人の設置義務化が予定されている社会福祉法人にとっての課題なんですけども、監査を受け入れる準備をしなければならないですし、適正な監査コストを実現しないといけません。
やはり大手の監査法人ということになると相当コストが高くなってきます。
それに対応するためには経理人材の負担も考えていかなければならないと。
これは効率的な監査によって実現が可能なんですね。
効率的な監査を実現するためには、監査法人が一体何をやっているのかということを理解していただかなければなかなか先に進めません。
一般的に監査法人は何をしているのか、特に社会福祉法人の関係者の方はほとんどご存じないと思いますので、まずはこれをきっちりと理解していただきたいと思っています。
こちらに関しましては別のビデオコンテンツがありますのでぜひそちらもご参照いただけるとありがたいと思います。

今回、社会福祉法人制度改革の概要、特に会計監査人を設置しなければいけない方向けにお話を進めていきましたけども、もともとの設置の趣旨に立ち戻っているだけという風に考えていただけるとシンプルですし、面倒ではありますが、法制化・法律化が進んでしまいましたので、その中で法人をより良くしていただくといったところのきっかけと前向きに考えていただけるといいかなと思います。