八田先生の元金融庁長官への反論は会計士たちにも向けられている

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八田先生が、東芝の監査意見を限定意見としたPwCあらた監査法人に対し、説明責任を果たせ、とする佐藤元金融庁長官に、監査法人はそもそも経営者の見方、つまり、経営者は監査意見をとることにより、決算数値の説明責任から解放される、という意味のことを主張しています。

したがって、監査法人や監査制度を批判しても意味がないとしています。
この中で、公的機関に監査をさせろ、という意見があるのは分かるが、どこの国でも会計監査は民間が行っており、そんなことをすれば、世界中から信頼を失うとも主張されています。私は、どうしても信用できないなら、いったんは公的機関に監査をしてもらってもよいのではないかと考えています。しばらく迷走した後に、元の制度に戻ると考えているからです。その点以外は、八田先生の意見に賛成です。

一方で八田先生は、このような批判にきちんと応えられない会計士たちにも失望しているようです。その結果、優秀な人が会計士になりたがっていない、とされてます。その原因は1日中、パソコンに向かって言われたことをやっているだけではやりがいもへったくれもないだろう、ということです。

今の監査は、その目が顧客ではなく、問題が起きたときに責任をとらなくてもすむように、書類、データの整理をできるかぎりやろうという方向に向いています。もちろん、専門家としてこれは大切なことです。しかし、監査人には経営者とのディスカッションで不正の兆候を見つけたり、あるいはその議論の中で、会社の方向性について議論したり、あるいは、リスクを判定した上で監査手続を決めたり、実はものすごいレベルの高い業務がたくさんあります。ここはデジタル的思考では簡単にいきません。人間臭いやりとり、信頼関係を構築することが大切なのです。これができないと、顧客との関係は冷たくなり、必要な意見交換ができず、形式的なチェックを繰り返すだけのつまらない仕事となります。形式的なチェックをするとしても、そこにどんな意味があるのか、なぜやっているのか、を理解することも大切ですし、経営者とのディスカッションの中で、自分のビジネスパーソンとしての未熟さを知り、彼らに負けないよう、勉強、見聞を広めることもとても大切です。監査はそんなに簡単な仕事でもないし、つまらない仕事でもありません。