東芝に限定付適正意見がつけられた理由
会計監査情報東芝の決算に限定付き適正意見がつきました。これについては、限定付適正意見は、決算書を「概ね妥当とする」意見であり、東芝に甘すぎる意見だ、などと全く会計監査のことを理解していない記事も多く、かえって読者は混乱をしているのではないかと思います。
限定付適正意見とは、限定された部分を除いてはOKという意味で、概ね妥当とするものではありません。
そして、今回限定されている点は以前から論点となっている、ウェッチングハウスの子会社であるCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社の工事保証損失引当金 約6,500億円を2016年3月期に認識すべきであったのに、しなかった、その点を限定しています。詳細は、東芝のリリース(http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20170810_3.pdf)をご覧ください。
したがって、何がおかしかったのかはこの報告書を見れば分かるはずで、これに対して不適正意見をつけなかったの監査が甘い、とするのは少しピントがずれています。
以下の記事は、的を得た批判をしています。しかし、PWCあらた監査法人は現制度の中で最低限の仕事をしたといってよいでしょう。不適正意見が出せなかったのは、業界の圧力といいますが、これも事情通の公認会計士という情報ソースによっているにすぎず、説得力はありません。
マスメディアはまずこの報告書から読める正確な情報を読み解き、報道をすべきでしょう。それができたうえで、今後のあるべき方向性を論じるべきです。
PwCあらた監査法人が不適正意見をださなかった理由は、前任監査人である新日本監査法人との関係に配慮している可能性があります。PwCあらた監査法人が間違っていると判断し、限定をつけたのは、前任監査人である新日本監査法人が監査を担当していた時期のものであり、不適正意見を出すには、新日本監査法人の意見を完全に否定することになります。これを避けた、という点では批判される部分もたしかにあります。しかし、すでに提出された情報で、東芝の今回論点になっているポイントははっきりしたわけで、批判は批判で甘んじて受けるとして、だから実態が隠されたとか、概ね妥当という玉虫色の結論が出た、などという論評は本質をついた報道ではないことは指摘しておきたいと思います。
瀕死の東芝より先に死にかねない、監査法人の「危うい体質」 #現代ビジネス https://t.co/CBClpWoWi2 https://t.co/CBClpWoWi2
— 大原 達朗 Tatsuaki Ohara (@ohhara_cpa) 2017年8月14日