19.監査で必要な資料の見直し

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 重要性のないものは修正しないと、先ほど重要性のことはあまり考えないでいただきたいというお話をいたしましたけれども、いったん締めてしまって、開示資料を作り始めた以上は、細かいものは直さないほうがいいと思います。効率良く仕事を進めていこうと思えば、数字締まったら同時並行的にを作ったり、開示資料を作ったりしますよね。そうすると、数字直すと全部直さなきゃいけないじゃないですか。この工数ってバカにならない。基本はやめたほうがいいです。できれば監査法人の数字が固まるまで開示資料作らないほうがいいのですけれども、そのようなこと言ったら、ほとんどの会社が間に合いませんから。同時並行でやらざるを得ない。だから、数字を間違えないというのは、分析をして、監査法人に数字を出す前までです。そこまでに絶対に1円も間違えないつもりで、決算とともに分析資料、監査対応して出して、その後は、多少間違っていても、重要性の基準値内だったら、修正しないです。これをチョコチョコ入れていると、いろいろな影響がいろいろなところに出てきますので、これは1回決めた以上は修正をそう簡単にしないということが大事かなと思います。ルールを決めておくことが大事だと思います。

 監査法人の担当者が変わって、会計資料が変わるという話ですが、基本はないです。実態としてはあるのですが。それはなぜ皆さんがそう感じられるかというと、ドキュメンテーションが残っていないからです。あのときああ言ったじゃないかというような話になるのです。監査法人の担当者が変わると会計処理が変わる場合は一つあります。もともと間違っている。前の担当者が間違っていることに気付いていないわけですから、担当者が変わることによって、会計処理の間違いが分かったのです。でもそう言えないので。そうしたら訂正どこまで出しますかというようなしびれる話になってくるので言わない。でも明らかに間違っている場合は、担当者が変わったときに気付きますから。それは仕方がないです。ぜひ前向きに捉えるようにしてください。前のAさんがいいって言ったのだから、いいと言っても、間違っているもの見つけてしまったらやばいではないですか。これは、唯一あります。担当者が変わったことがきっかけで、もともとの間違いが分かるケースはまれにありますので、その場合は指示にしたがってください。ただし、誤解が生じないように全部記録を取っておくのですね。こういう会計処理を誰がどういうふうにしたということを、全部記録に取っておくことです。それは言った言わないにはなりませんから。これはすごく大事なことかなと思います。監査で必要な資料の見直しというのは、ぜひしていただきたいと思います。

 若い監査人はよく分からないのです。よく分からないというか、怒られるのが嫌なのです。怒られるのが嫌なので、取りあえずもらえるものは何でももらっておこうというメンタリティになるのです。だから、資料くれと言ったときに、なぜそんなものを出さなければいけないのという確認はすごく必要です。あとは、分析資料等の中に、監査で出した資料も全部書いておくといいです。何に使ったとか。そういうことを1回確認しておけばいいと思います。そうすると、去年と違う資料を出せと言われて、何が変わったか分かるのです。一つは経済事象が変わった、新しい取引が出てきたからそれについて教えてください。資料ください。これは出さないといけないです。これ何が変わったのか。あるいは監査基準が変わった。皆さんあまり関心はないかもしれませんけど、監査基準が変わってやらなければいけないことが増えたという場合はあり得るわけです。それは皆さん説明受けて、納得すれば出さざるを得ないじゃないですか。ということをしたほうがいいと思います。全部が全部、担当者が適当にやっているだけではないので、そのためにも全部記録を取っておくことが大事だと思います。言った言わないは、やめましょう。どっちが記録を取ってもいいのですけれども、監査の手続きは監査人に記録取らせていいと思うのです。その写しをくれでいいと思います。そこはうまくやっていただきたいなと思います。監査日数を確認しておくと、最近厳しいので、どの会社さんもやっていらっしゃると思います。200日来ると言って、来てないじゃないかというような、請求されるというのは、最近できないので。私がやっていたわけではないですよ。厳しくやっておられますけれども、監査法人は基本単価と日数でしか決まっていませんので、日数きちんと合っているかどうかの確認は当然されたほうがいいと思います。大半の場合は思ったよりも多くかかっていて、やぶへびになるケースが多いですけれども、一応確認を取られたほうがいいと思います。

 相談してもなかなか結論が出ないというのは、先ほど申し上げた通り、向こうのチェック体制、審査体制というのは複雑になってしまっていますので、多少はやむを得ないです。だから、早めに相談をするということと、答えがない、要は基準を見れば明らかにこうしなければいけない、例えば発生主義によらなければいけないというのは、あまり議論の余地がないです。ですが、減価償却の耐用年数を変えようとか、評価方法を変えようというのは、どっちでもいいわけです。選択意見を認められているような場合というのは、判断を要しますからパートナーに話を持っていかないとダメです。窓口としてマネージャーとか現場の担当を使うのはいいですけれども、パートナーに確認をさせないと絶対にダメですので、まずそこを意識してください。とはいってもパートナーで全部決められないような体制になってしまっていますから、そのあと多少時間がかかるというところも、ぜひ押さえておいていただきたいなと思います。