15.リスクアプローチで一番大事なのは分析

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 それをどうやったら回避できるかということですが、リスクアプローチで一番大事なのは、分析なのです。皆さん、分析をしていますか? すごく抽象的な質問をして申し訳ないのですが、わざと抽象的な質問をさせていただいています。分析はいろいろな意味でされているのだと思います。当然、短信や有報に書かなければいけないですし、月次の報告、決算の報告を取締役会にするときに丸腰で行くわけにいかないではないですか。絶対皆さんされているのです。ただし、監査法人の監査の観点でいう分析は少し目的が違うのです。監査法人の分析は残高が正しいかどうかをチェックするためにやっている分析なのです。投資家に対してはこれだけもうかっていますよ。あるいはもうかっていないにしても、これだけこれからがんばってリカバリーしますということをアピールする場面です。社内での業績分析は、良かった悪かったという、基本は今後の対策を立てるための分析です。ただ監査法人でやる分析は、そこに出してあるBSPLキャッシュフローというのが正しいか正しくないかの分析なのです。それで、前提があります。すでに適正意見を出している数字は正しいということです。それはそうですよね。なぜなら監査したあとにOK出しているわけですから。正しくないと困ってしまうのです。それをベースにやっています。だから、前年同期比較とか、前期期末のBSの数字を比較して、今のBSの数値がどう動いたのかを見ているわけなのです。この分析が非常に大事なのです。これを社内でやってしまえばいいのです。面倒くさいと思われるかもしれないですけれども、どうせやっているのです。聞かれてやっているではないですか。それはあとで担当者ごとにバラバラやっているわけです。これを全部まとめてやってしまえばいいです。それで、答えたことの履歴を全部取っておいてください。監査法人にあげてしまうだけではなくて、社内でも全部取っておいてください。説明に関してこういうことをお話ししました。だから「去年言っただろ」って言わなくてもそこに書いてあるのです。そんなに「去年言っただろ」って言いたいのだったら、去年言ったことをハイライトか何かにしておいて、エクセルか何かで作っておいていただいたらいいのではないかと思います。

 これを社内でやってしまうのです。どうせやっているのですから。これ財務諸表全体。あとは当然、勘定科目のレベルにいくと、勘定明細を作っていかないといけないので、勘定明細ごとです。売掛金だったら、売掛金全体の増減、どことの取引が増えた減ったという話になってしまうので、取引先ごとの売掛金の残高を並べていってその分析をきちんとしておくということです。どうせ聞かれることは分かっているのですから。

 そこで結構ミスも見つかると思います。数字は嘘をつかないです。私の経験上、こういう対前年同期分析や説明がつかないケースは100パーセントミスです。誰に聞いても理由がはっきりしないものは100パーセントミスがあります。会計処理に問題があります。聞いて分からないということは、経済事象がその数字と違うわけですから。売掛金が倍になった。理由はいくつかしか考えられないのです。売り上げが非常に増えたとか、支払サイトが変わったのか。ついでに言うと、期末日が休日だったなど、それぐらいのことを考えてみてもないのです。担当の営業に聞いても分からないです。これはほとんどが間違っています。合理的な増減説明ができないものは、かなり多くの確率で間違っています。だから監査人はたまにしか来ないのに、チョコチョコ間違いを見つけるのです。皆さんは一個一個積み上げで作っていっているではないですか。1個、2個の間違いは、やはり見逃されるケースがあるのです。ものすごい量の仕訳をしているわけです。今は、伝票を切っていると言うと、合わないかもしれないですけれども。売り上げなんか自動証明でバンバン来てしまいます。ものすごくトランザクション処理しているわけです。やはり、間違えていることはあり得るのです。