1.会計監査の実態。監査法人がこうして監査を実施している。

会計監査の実態動画セミナー

では始めさせていただきます。お忙しいところをお越しいただきまして、誠にありがとうございます。きょうはタイトルに書かせていただいています通り『会計監査の実態。監査法人がこうして監査を実施している。こういうチェックを受けている!』というテーマで、まず1時間ほどお話をさせていただきたいと思います。

 大変恐縮ながら、今回のセミナーからお手元の資料はお配りしておりませんけれども、後日、先ほどタカヤマからご説明させていただきました通り、きょうのアンケートのお願いのメールをさせていただきます。こちらのご返信にセミナー資料ご希望の旨記載していただきました場合には、PDF形式で返信させていただきますので、そちらにてご了承ください。

 きょうの1時間半のテーマはかなりボリュームがあります。ポイントを絞って、どちらかというと紙には書いていない内容を中心にお話を申し上げたいと思います。きょうは後半で30分、質疑応答の時間を設けさせていただいておりますので、お話し申し上げた内容等にご不明な点があれば、そちらのほうでご質問をいただきたいと思っています。

 なぜ、今、このテーマで皆さんにこのような内容をお伝えしなければいけないかと申し上げますと、正直言って、当監査法人は営業の側面はあるのですが、なぜうちの監査法人がこんなテーマで営業につなげていくのかというと、この業界全体でもう制度疲労なのです。もう無理なのです。なぜそのようなことが言い切れるかというと、私もかつて大手の監査法人におりまして、1998年合格なので、今15年目です。監査法人に勤めて15年目ぐらいの世代というのは、そろそろパートナーになる世代です。監査法人にサインしてはんこを押す世代です。彼らとのコミュニケーションというのは、絶えず取っているのですが、大きな潮目がここに来て、来てしまっています。その潮目は何かというと、監査法人の業績です。皆さん、監査法人の業績をご存じですか? 大体、私がこの業界に入った15年前ぐらいから、年に1回は日経が真面目に調べてくれて、この監査法人はお客さんがどれぐらいで、売り上げがいくらで、大体いくらぐらい利益があるか、定常利益だったと思いますけれども、出ています。そういうリサーチ結果を出していました。今もそれは変わっていないのですけれども、大きく変わった点があります。日本でも有限責任監査法人という制度ができました。有限責任監査法人、皆さまの会社の監査をやっていらっしゃる監査法人です。大半の皆さんの会社の監査は、大手がやっていらっしゃると思うのですけれども、大手はほとんど有限責任監査法人です。大体お分かりになっている方もいらっしゃると思うのですが、有限責任監査法人というのは、どういうことかご説明します。有限に対する言葉は無限です。今まで、何も言っていなかったときは、無限責任監査法人だったのです。では、誰の責任が無限だったのかというと、パートナー、社員の責任が無限だったのです。では、無限とはどういうことなのかご説明します。大手の監査法人は、社員、パートナーが数百人いるのです。今、私が大手と申し上げているのは、新日本監査法人とあずさ監査法人と監査法人トーマツ、この3社のことです。日本の上場会社は今、約3500社です。このうち1000社ずつをこの三つの監査法人がやっています。

3500分の3000は大手の三つが1000社ずつやっていますから、ほとんどこの人たちのことを見ていれば、大半が見られてしまうのです。このような状況なので、ここでと定義をしていますが、彼らは全て有限責任監査法人です。なぜ、有限責任監査法人にしなくてはいけないのかというと、上場会社だけで1000社やっているので、大体パートナー1人、全部のべで平均すると5~10社ぐらいだと思います。多い先生でも、今10社サインしている人は、そんなにいないのではないかと思います。というのは、監査法人がパートナーの数と上場会社の数を考えてみれば、そんなにめちゃくちゃな人数はサインしていないと思うのです。もちろん自分が責任を持ってサインしている会社に何か大きな問題があって、自分に過失があった場合には責任を取らなければいけないです。破産してでも責任を取らなければいけない。これは会計士で監査をやっていれば仕方がないことなのです。そうではなくて、300人も400人もパートナーがいて、自分が全く行ったことも聞いたこともない会社で、はっきり言うとどういう会計士か、どんな能力があるのか、どんな人格なのかをよく知らないパートナーがヘマをしても、無限責任監査法人では責任を負わなければいけなかったのです。30人、40人のパートナーであればやむを得ないと思うのですが、さすがに300人、400人のパートナーになると、現実問題としてきついのです。要するにすでに有限責任監査法人になったのです。自分のやったことについては、最後まで責任を取りなさい。いくらパートナーとはいっても、自分が全く関与しないような会社の問題について、無限責任はないでしょうということで、有限責任監査法人というのが導入されたわけです。それは、皆さんにとってみると、大きな問題ではなかったと思います。しかし監査の業績のお話をするときには、有限責任監査法人は皆さんにとってみると、多少リスクがあるのです。なぜかというと、今まで無限にパートナーみんなが責任を負ってくれたわけですが、有限責任監査法人では責任を負ってくれる範囲が限定されてしまうわけです。なので、制度的に決算開示しろということになっているわけです。有限責任監査法人に移行した監査法人は、決算を公表しています。しかも監査を受けています。大体大手の監査法人の監査を中堅監査法人がやっているのです。ちなみに、われわれが属している日本公認会計士協会も監査を受けていて、優成監査法人が担当しています。そのような感じなのです。